一番は野菜が美味しくなること。野菜本来のうまみや栄養、食感を引き出したい料理に向いています。
水を加えずに素材の水分で調理することで、うまみや栄養を逃さず、野菜本来の美味しさが引き立ちます。とくに、煮すぎるとくたっとしがちな葉物や、ほくほく感を味わいたい根菜などにぴったりの調理法です。

足すより引くことで、見えてくる美味しさ
毎日の料理では、味をみながら調整する過程で“なにかを加える”ことで味つけしようとしてしまいがちですが、無水調理はその逆。水や調味料を少しずつ引いていくことで、素材の美味しさが見えてきます。「じゃがいもの味が濃い」「小松菜が甘い」「これなら塩だけでも十分」といった新鮮な発見があるのも、無水調理の楽しみのひとつです。

まずは、素材の力を信じてみる
「水の料理」といわれる和食がベースになっている日本の家庭料理では、出汁をひいたり、米を炊いたりと、水が欠かせません。そのため「無水調理」というと、なにか特別な技術のように感じてしまいますが、とてもシンプルで美味しい調理法なので、今すぐにでも取り入れることができます。
季節の野菜を手にいれたら「少しだけ水と調味料を減らして、素材の味を優先してみよう」というくらいの気持ちで十分です。

無水調理に向いているのは、野菜多めの料理
水をたっぷり加えて煮ると、どうしてもビタミンなどの栄養分は煮汁に溶け出し、食感も失われがちです。一方、無水調理はよけいな水分は加えずに野菜や肉から出る水分をつかって調理するため、栄養はもちろん、うまみも食感もしっかり残ります。
とくにおすすめなのは、トマト煮込みやポトフ、白菜と豚バラの重ね蒸しなどのコトコト煮込む料理や、食感をしっかり残したい料理です。

白菜と豚バラの重ね蒸し。味つけは、少量の塩と仕上げの黒コショウのみ。

とうもろこしは、プチプチと弾ける食感に。

フタがしっかり閉まり、蓄熱性の高い鍋を用意
鍋選びも大切なポイントです。フタがしっかり閉まる密閉度の高い鍋であれば、食材から出た水蒸気が逃げにくく、素材から出た水分を鍋の中に閉じ込めることができます。また、水分を出す工程では弱火でコトコト煮込むため、鍋内部の温度をキープできるよう「蓄熱性」の高い鍋であることも大切です。

味わい鍋にたくわえられた熱。鍋のすみずみまで温度が安定しています。

食材の水分で調理するので、調味料は少なめ
無水調理では、野菜や肉などの食材から出る水分で調理(※)するため、使う調味料は少なめでも十分うまみがあります。
中火で加熱をして沸騰したら弱火でコトコトが基本。味わい鍋は蓄熱性が高く、食材の種類によっては余熱だけでも仕上がります。
※必要に応じて少量の水を加える場合もあります。

野菜の味が濃く感じられる「無水カレー」は、とくに人気のメニュー

毎日の調理の小さな工夫、コツとして
無水調理は、水分が多い野菜を多めに使う時の“調理のコツ”です。
「食感を良くしたい野菜や根菜は、茹でる水を少なめにする」「肉じゃがを(水やだし汁ではなく)玉ねぎや肉の水分で煮てみる」「調味料を少し減らす」のようにちょっと“引き算”するだけで、素材の味がぐっと前に出て、いつもの料理がちょっと味わい深くなります。ぜひお試しください。